今週読んだ本

NHKラジオの「まいにち中国語」を聞いて、「喜欢(xǐ huān:好きだ、好む)」という単語を学んでからWBLの1期5話を見たら、シューイー君が「我周書逸喜欢高仕徳!」と言っているのを聞き取れたのが今週最大の発見だった。流水に触れて「water」を学ぶくらいの衝撃で「xǐ huān」を体感した。勉強って素晴らしい。
ついては今週読んだxǐ huānな3冊について書きます。


■春風のエトランゼ 5巻/紀伊カンナ著/祥伝社

悪い人が出てこない話が好きだ。登場人物は全員一寸の隙間もないくらいに幸せであってほしい。悪意や暴力でつらい目に遭わされる話は現実にあふれるニュースで十分だ。フィクションの世界ぐらい、いい夢見たっていいじゃないか。そこでこの「エトランゼ」シリーズである。

第一作「海辺のエトランゼ」のあとがきで、著者の紀伊先生は「とにかく読んで幸せになれる様なストレートなお話とかわいいカップルを目指して描きました」と書かれている。そのお言葉どおり、相思相愛のふたりが優しい人たちに受け入れられ、見送られながら沖縄、北海道と旅をする。出てくる人は全員善い人で、誰も誰かの生き方を否定しない。第一作「海辺のエトランゼ」での実央のセリフ「俺ね 女の子が好きだよ それでも駿のこと好きになったよ 大丈夫だよ 男が好きでもおかしくないよ」これが全てだと思う。この作品には本物の優しさがある。今回から東京編がスタートし、大都会でやさぐれちゃったりしないかと不安になったが二人はどこでも幸せなのだった。東京での生活も楽しそうだ。よかった。


■ホテル・メッツァペウラへようこそ 3巻/福田星良著/KADOKAWA

フィンランドが好きだ。高校生の時にFF5のアレンジCDを聞いてAngelin tytötの歌声に心を打たれてからというもの、とりわけフィンランドのラップランド地方には強い思い入れがある。

フィンランドも結構注目されるようになってきたと感じるが、かもめ食堂はヘルシンキだし、ラップランドは物語の舞台には選ばれないか…と思っていたらこの作品はフィンランドのラップランド地方の小さなホテルが舞台なのだった。この地を舞台に選んだ作者様に心から感謝の意を捧げたい。

さてこの作品は日本から来た訳あり青年がフィンランド北部の小さなホテルで従業員として受け入れられるという話である。主人公のジュン君は日本で過酷な経験をしており、彼の回想シーンには背中がヒヤッとする。が、周囲の人々は彼からむやみに過去を聞き出すようなことはしない。ホテルメッツァペウラの支配人やシェフ、その家族、訪れる客と関わりながらジュン君は未来へと進んでいく。

私はアキ・カウリスマキ監督の映画も好きなのだが、カウリスマキ監督の作品にもわけありの男がふらっと現れ、受け入れられていく。「希望のかなた」という作品は、内戦から逃れてきたシリアの青年がヘルシンキのホテルで雇われるという物語だが、周囲の人間はよけいな詮索をせず、淡々と事実を受け入れ、各々の仕事をこなす。他人への過度な干渉やおしゃべりを好まない、というのはフィンランドの国民性のような気がする(専門的に研究したわけではないけれど)。

カウリスマキ監督の映画には唐突に暴力がねじこまれるが、この「ホテル・メッツァペウラ」に流れる空気はやさしく穏やかだ。ジュン君には頼むから幸せになって欲しい。ああHOTELLI METSÄPEULAに泊まりたい。そんでサウナに入ってラピンクルタ(※『ラップランドの黄金』を意味するビール)をごくごく飲むのだ。Suomi on kaunis maa.


■すべて忘れて生きていく/北大路公子著/PHP文庫

北大路先生の文章が好きなのだ。なのでこの本も前から持っているのだが、いつのまにか内容を忘れてしまっているので、ページを開くたび申し訳ない気持ちになる。

冴えない日常や浮かれない気分を嫌味のない笑いに転がしていく。誰かを貶めない。「!」や「…」という記号に頼らない。時折スッと入ってくる、少々センチメンタルな風景描写。私が文章を書くにあたって「こうありたい」と思うものが北大路先生のエッセイに入っている。

また、心のくつろがせ方がとても面白い。偉人伝を読んで「世の中には頑張っている人がたくさんいるんだから私は頑張らなくていいという信念を獲得した」という考え方には感動した。人に迷惑をかけてはいけないが、誰それが頑張っているのだから私も頑張らなくてはいけない、という考え方は体を壊す。若いときは勢いで出来たこともあるが、これからは心身の健康第一で生きていきたい。

今回読み直して、泣きそうなくらい心の底から同意した一節がある。

197ページから引用―

「『テレビや映画での殺人シーンに耐性がなくなってきたら老化の始まり』という説を少し前から唱えている私だが、そして自分は今や殺人どころか暴力シーンや喧嘩シーンにも耐えられなくなってきていて、そらあんた橋田壽賀子ドラマが高齢者に人気のはずだわずっと喋ってるだけだし」

―引用おわり

先生!!あなたはか弱き中年の代弁者なのか!!

私にはもう本当に耐性がない。しかし世の中で作られているテレビドラマや映画はほぼ殺人か暴力か喧嘩なので私だけかと思っていた。これが老化であるなら甘んじて受け入れよう。私にも橋田壽賀子ドラマおもしれーとか呟く時代がくるのだろうか。そんな未来を想像してもまるで盛り上がらないが、ちょっと楽しみでもある。

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