ウメ子先生を爪切りに連れて行った。前回が4月15日だったので約半年ぶりである。
猫の爪といえば細く研ぎ澄まされた武器のようなイメージがあるが、ウメ子先生ほどのご高齢になると爪は丸く太くゆっくりと伸びてゆく。素人の手に負えない作業となるため、ウメ子先生が歩くときにチャッチャッと犬が歩くときのような音がし始めると、しもべは動物病院に爪切りの予約を入れる。
ウメ子先生は病院に行く度に吠える、お医者さんに牙を剥く、引っ掻く、放尿するなど大暴れなのだった。爪切りとはウメ子先生に「みの虫袋」という保定袋に入っていただき、首には噛みつき防止のエリザベスカラーを巻いて行う一大プロジェクトだったのだが、この夏の異常な暑さのせいか、加齢のせいなのかウメ子先生はやせて一回り小さくなり、動きもゆっくりとなり、ふとしたタイミングで尻もちをつくなどしてかつての大暴れ猫の面影はない。今回初の試みで、みの虫袋とエリザベスカラー無しで爪切りに臨んだ。
ウメ子先生は眉間をしわくちゃにして激怒していたが、診察台の上では暴れもせず、かみつきもせず、おしっこもせず、黙ってパチンパチンと爪を切られていた。19年目にしてとうとうウメ子先生に諦めの境地が訪れたのだ。まるで風邪をひいたヒヨちゃん(@動物のお医者さん)ではないか。そういえばあのときのヒヨちゃんは鳥インフルエンザだったんだよな。今読み返すと背筋が寒くなる。
なおウメ子先生の体重を測ったら3.4kgだった。ピーク時は6kgだったので約半分である。今年の4月に4.8kgほどあったはずなので心配だったのだが、獣医さんによると加齢によるものなので、食欲があるうちは大丈夫だということだった。ウメ子先生は朝と夕方にパウチのモンプチを食べ、合間にカリカリも嗜まれる。もしこの痩せ方が病気によるものであれば来月の台湾旅行は取りやめねばなるまいと覚悟していたのだが安心した。猫も人も年をとると痩せるものなのだ。多分。
また夜中になると始まる遠吠えも続いているので獣医さんに相談したところ、基本は昼寝を控えめにして夜は人間とともに寝る、という生活をさせるのが第一だが、もしあまりにひどいのであれば精神安定剤を処方します、とのことだった。猫に精神安定剤…猫社会にもメンタルヘルスがあるのか。
公共交通機関での長時間移動など、騒いではいけない場所に連れて行かざるを得ない場合の一時的な精神安定剤の服用はやむなしだろう。しかし夜鳴き防止のために精神安定剤を常用というのはあまりにやり過ぎに思えて、薬の処方は止めた。人間が猫の生活に付き合えば良いだけの話である。しかしウメ子先生には昼間はできるだけ起きていていただこう。
爪切りはかつてないほど順調に終わった。迎えに来てくれた父の車に乗り込み、こんな日が来るんだねえとしみじみ帰路についた。
…が、家に近づくにつれ車内がどうも臭い
家に着いてケージ内を確認したらウメ子先生が怒りのウンチをしていた。
診察台ではおとなしかったが人間の所業に納得しているわけでは決してなかったのだ。
しもべはウンチのついた足で部屋の中を歩き回ろうとするウメ子先生を慌ててお止めした。
しもべ「殿、それはなりません」
ウメ子先生「カーッ!!!!」
ウメ子先生の前に蝋燭の炎があったら消えていたであろう、見事な有気音。そりゃそうだ。病院から帰ってきて風呂など冗談も休み休み言えと思われたに違いない。しかしこのまま布団に上がっていただくわけにはいかない。意を決してウメ子先生にはお風呂に入っていただくことにした。
ウメ子先生のお風呂はおそらく10年ぶりである。最後にお風呂に入れたときは、ウメ子先生が怒りの赴くまま半乾きの体で外に飛び出して砂の上に寝転がったのだった。今回は砂がないので大丈夫だろう。ウメ子先生の首から下にぬるま湯をかけ、泡タイプのボディソープでやわやわと体を洗い、念入りにすすいだあとタオルで拭いて、ドライヤーで乾かした。ウメ子先生は終始大声で怒っていた。ウメ子先生はドライヤーも苦手なのだ。腹の毛に温風をあてようものなら身を捩っての大騒ぎとなった。
どうにかして乾かすとまあなんということでしょう。
母「ウメ子かわいくなったんじゃない?」
しもべもそう思う
写真の表情からもわかる通り、本人は不本意だと思うが毛はフワフワだし、やせて顔が小さくなったぶん、大きなお目々がくりくりとして非常にかわいいのである。
洗えてよかった―
しかし風呂場の目皿は毛で詰まるし脱衣所も毛だらけである。風呂周りの後始末にも時間を費やし1日がかりの作業となってしまった。
猫のお体の負担も少なからずある。これから本格的に寒くなる。お風呂上がりに体を冷やしてお風邪など召されてしまってはしもべは切腹ものである。
次回の爪切りこそ穏便に終わってほしいと願うしもべであった。




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