ウメ子先生がこの世を去って5ヶ月が過ぎた。
週に一度部屋の掃除をすることも、朝余計目に早く起きてご飯やトイレのお世話をすることも、早朝の遠吠えに悩まされることもなくなった。「でも寂しさを忘れることもないよ」と心の中のカヲルくんが囁く。猫に充てていた時間に他の用途はなく、あくまで猫のために使われなければならないのだった。何をするにも身が入らず、埃っぽい部屋で横になってスマホをいじる時間ばかりが増えていく。なんとかしなければ。
ウメ子先生はゆるぎない我が家のレジェンド猫である。その思い出は大切にさせていただくとして、私は新しく猫をお迎えしようと決意した。
自分の年齢と、これからお迎えする猫が短くとも20年は生きていただくことを考えたら、今このタイミングが仔猫氏をお迎えする人生最後のチャンスだ。ああ仔猫。ふわふわでよちよちの仔猫。ペットショップで購入する考えは毛頭無いので保護猫の譲渡会情報を検索するが、そうそう都合よく仔猫ちゃん案件には出会わない。20年前、川崎で生後2ヶ月のウメ子先生に出会えたのは奇跡だったのだなとしみじみ感じ入る。ブンオレンジさんが調達してくれないだろうか。ブンオレンジさんが両手にふわふわの仔猫を持っている画を想像したら鼻血が出そうになったので誰か描いてください。何の話でしたっけ。
■仔猫はある日突然に
ゴールデンウィークを間近に控えた、4月の末のことである。 4月から新しい職場に異動になっていたのだが、3月まで勤務していた営業所から電話がかかってきた。今度は何をやらかしたのか。おそるおそる出ると、電話の内容は意外なものだった。
「仔猫に会ってみませんか?今日の仕事が終わってからでも」
聞けば職場の人の友達の、さらに知り合いの農家の方のビニールハウス内で野良猫が子供を産んだそうなのだが、その母猫がいなくなってしまったので里親を急募しているという。生後1日。え、1日?!!!???
生後まもない仔猫の飼育は非常に困難であると聞いている。2時間おきの授乳が必要であるし、仔猫自らの力だけでは体温調節ができず、排便も促してやらなければできない。漆原教授(@動物のお医者さん)ですら、生後2日の仔犬の世話に苦労されていたではないか。私は到底漆原教授のようにはなれない。
(『動物のお医者さん』コミックス8巻より)
しかし夜はまだまだ冷える。母猫のいない仔猫たちを思うとこのまま何もしないというわけにはいかなかった。気もそぞろに業務を片付け、取り急ぎ購入した子猫用ミルクとシリンジを携え連絡をくれたMさんと仔猫を保護している農家のご主人に会いに行った。
すでに遅い時間になっていたにも関わらず、ご主人は快く仔猫のいるビニールハウスに案内してくれた。足元を懐中電灯で照らしながら、夜露に濡れる草を踏みしめ、ビニールハウスの中にお邪魔すると、我々に牙を向いて威嚇する黒豹のような母猫氏がいた。
お母さんおったやん!安堵する我々。
ご主人に直接お話を伺うと、人づてに聞いた話とは少し事情が異なっていた。母猫はまったく行方がわからないのではなく、不在の時があるので心配だということだった。自然の多い地域であるためイタチやヘビなどもいて、お母さんがいない間に仔猫が襲われる危険がある。町の保護猫団体さんと協力して母猫と仔猫を一緒に保護して、安全な場所で子育てをしていただき、子猫ちゃんたちがある程度大きくなったら里親を希望する人に仔猫をお渡しすることを考えている、母猫氏に飼い主はいないので、今後は不妊手術ののち地域猫とするか、里親を探すか検討されているとのことだった。
しばらくすると母猫さんがビニールハウスから出ていってしまったので、仔猫ちゃんたちを拝見させていただいた。段ボール箱の底で6つの小さな毛玉がうごうごしていた。
母猫さんは美しい黒猫だが、お子さんたちの柄は様々
うわ〜〜!!!
尊すぎて腰が抜けた。とても触れることなどできなかったが、人間の手のひらにすっぽり収まる小ささだ。体重も100グラムほどしかなかったのではないか。
仔猫の里親になりたいという方が他にもいらっしゃるので、どの子が良いといった希望があれば保護猫団体さんに伝えておきますとのありがたいお話をいただいた。我が家に来てくれるならどんな子でも、と思っていたが、ウメ子先生と同じ柄の子を見た瞬間、キジトラの子を指名してしまった。
翌日、母猫さんと仔猫たちが保護猫団体さんによって無事保護され、団体さんのお家で子育て生活がスタートした旨連絡をいただいた。ご主人と保護猫団体さんの連携した対応が迅速で素晴らしい。命のリレーだ。アール・イズ・ウェル、きっとうまくいく。
■猫のライフプランを考える
ゴールデンウィークに入り、私は父と中学生の姪っ子ちゃんの3人で、母猫さんと仔猫ちゃんたちの様子を見に保護猫団体さんの施設に伺うことにした。
近所に住む猫好きの姪っ子ちゃんは、我が家に万一のことがあったときに猫の後見人になってくれることを快く引き受けてくれた。大いに頼もしい親族である。
性別はまだわからないが、オスとメス、どっちが良いか姪っ子ちゃんに尋ねられた。当方ウメ子先生のお世話しかしたことがないので違いが分からず、どちらでも良いとボンヤリしたことを答えたところ、姪っ子ちゃん曰く「オスは人懐っこいし、甘えてくるよ。メスはスンッとした感じ」なのだそうだ。そうなのか。
1週間ぶりに母猫さんと仔猫ちゃんたちに会った。
母猫さんと仔猫ちゃんズ お母さんは漆黒の毛が艶々してました
1週間前に牙を剥いて怒っていた母猫さんは人間を見ても表情を変えることなく、静かに子どもたちにおっぱいをあげていた。もとはおとなしいお母さんであるようだ。仔猫ちゃんたちは目が開いていて、少し大きくなったような気がする。
全員かわいいんだが真ん中の白黒ちゃんがやばい
ひえぇ!!!!
愛らしさの破壊力で死んでしまいそうだ。いや死んでいる場合ではない。神はなんと可愛い生き物を地上につかわしたのか。
ケージの前でアワアワしていると、保護猫団体の方に「1頭のご希望と聞いていますが、きょうだいで2頭の里親になられるのはどうでしょうか?」とご提案をいただいた。
<メリット>
・1頭を世話するのと2頭世話するのはあまり変わらない
・仲の良いきょうだい2頭だと猫同士で楽しくやるので新しいところでも寂しくならない
・2頭だと運動不足にならない
・先住猫がいるところに新しく猫を迎えるとなるとうまくいかないこともあるが、もとから一緒にいるきょうだい猫であれば相性の問題は最初からクリアできている
2頭で飼うことは考えていなかったが、なるほど猫のためには2頭のほうがよさそうだ。
また、オス2頭だとわちゃわちゃして楽しく、メス2頭だと静かで穏やかで、お世話が楽だという。「スンッとした感じ」というやつか。どちらでもいいなあ。
しかし生まれた日が同じだと、老いるタイミングも同じになる。残念だが、猫の宿命で晩年は腎臓が悪くなってしまうだろうし、腎臓病の治療のための点滴と投薬が必要となるだろう。治療費が倍になるのは現実的に大丈夫なのか、という不安がよぎった。ペット保険に加入するつもりでいるが、2頭なら保険料も倍になるわけで…まあ猫のためなら死ぬまで働くつもりでいるが…
里親希望者は他にもいらっしゃるとお聞きしているので、里親が決まらない猫ちゃんが現れたら、きょうだいで2頭お迎えしたい、とお伝えした。
仔猫ちゃんは獣医さんによる病気の検査やワクチン注射なども経て、問題がなければ来月下旬頃にお迎えすることとなるだろう。待ち遠しい。
ちなみにペット保険を1社見積もりしたら、グーグルの広告がペット保険だらけになった。恐ろしいな!
保護猫団体さんの施設にはほかにも保護された猫さんたちがいらっしゃって、みなのびのびとしていた。毛艶がよく、少しぽっちゃりとしていて、人間から愛情を注がれているのがわかった。団体の方々は他にお仕事をしながら、無償で家のない猫たちの保護活動を行っていらっしゃるとのことで、頭が下がる思いだった。
帰りにケージ等のペット用品を見るため、3人でペットショップに立ち寄った。私の3ヶ月分の給料かそれ以上のお値段がつけられた美しい仔犬や仔猫のケースのまわりに、たくさんの人が集まっていた。それらをぐるっとひとまわりした姪っ子ちゃんは「とてもかわいいけど、血統書がついてなくても、さっきの施設で見た保護猫ちゃんたちはすごくかわいかったよね」。偉い!!そこなのだ姪っ子よ!!一緒に保護猫施設に行くことができて本当に良かった。
今年の弟からの誕生日プレゼントはおしゃれな猫の爪とぎ板でした 2頭でも使えるんですって!
■ネーミングセンス
さて、性別がわからないうちから名前をあれこれと考えてはニヤニヤしている。
動物病院の診察券や、ワクチン注射のおハガキの宛名が「○○(人間の姓)△△△(ペットの名前)ちゃん」となるのもふまえて、誰にでも覚えられやすく、親しみがあり、我が家の姓となじむ名前にしたい。
弟に相談したら「オニャンコポンはどうか。ガーナの神様だし『進撃の巨人』でも最後まで生き残る強いキャラだ」いやいくら強い神様でも動物病院で「オニャンコポンちゃんお入りください」って言われるのは獣医さんも困るのではないか。
私は三島食品のふりかけが好きなので、「うめこ」につづくものとして「あかり」「ゆかり」「ひろし」なども候補に挙げてみた。特に「ひろし」は芸人のヒロシ氏や神谷浩史氏など著名人もいらっしゃってなかなか味わい深いのではないだろうか。と思ったが、猫のひろし――「猫ひろし」はすでにいらっしゃるので候補から下げた。
ウメ子に次いで二番目だから「ドス(スペイン語で2)」という案もあったが、我が家の姓+「ドス」ではインチキ京都弁のようだ。せめてデュオだろうと思ったがガンダムウィングはカトル推しだったし、ガンダムでいくならほかにもイザークとかティエリアとかスレッタとかミオリネとかいろいろ…ではなく未就学児の甥っ子から70代の両親まで、だれもが親しみが持てるような和風テイストの名前にしたいのでガンダムは外した。
それから、オスでもメスでも良い名前にしたい。
じつはウメ子先生には、もらったときは「男の子です」と言われていたのでテニスの王子様に登場する立海大付属中学校の副部長にあやかって「弦一郎」と名付けたのだが、しばらくして動物病院に連れて行ったら女の子であることが判明したのでウメ子に改名したという経緯がある。たるんどる(言ってみた)。ちなみに
猫の名前人気ランキングの1位は「ムギ」ちゃんなのだそうだ。小麦色の猫ちゃんが多いのだろうか。「性別に関係なくつけやすい名前」というのが一因であるという。猫の性別はある程度大きくなるまでわからないものであるようだ。
以上の条件をふまえて、「トラちゃん」か、「ブンちゃん」にしたいなあと考えている。もっとも、無事我が家に仔猫ちゃんをお迎えできたら、の話だが。みんな健康に育ってくれることを心から願ってやまない。
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