昨年はコロナ禍の行動制限により、せいぜい出かけるところといえば健康診断の再検査結果を聞きに病院に行くぐらいしか用事がなかったのだった。今年は健康診断の再検査もなく自由な夏休みを満喫する予定でいたのだが、異常な暑さのため自ずと行動制限がかかった。なんでこんなに暑いんだ。
■8月10日(木)
使用している携帯電話の定期点検のために近くの携帯電話ショップに行った。ある日とうもろこしを茹でていたらショップから電話がかかってきて、ご使用の携帯に不具合はありませんか云々という話をしはじめたのだが、話し方がやけにゆっくりで要領を得ない。私は目の前でゆだっているとうもろこしが気になり「ちょっと今手が離せないんで、ともかくお店に伺えばいいんですね」と適当に予約をとりつけて切ってしまったのだった。ショップに行き、使用している携帯電話を店員さんに預けた。私の携帯電話は3分ほどして戻ってきた。
店員さん「何かご不明なことなどありませんか?」
私「携帯を落としたらフィルムにひびが入ってしまいまして」
店員さん「ああー…」
特に無料で張り替えてくれるわけではないらしいので話題を変えた。
私「そういえば夜中に充電ができていないことがありまして」
店員さん「そうですか、本体に異常はありませんでしたので、気になるようでしたら3か月後に機種交換はいかがでしょうか」
私「はあ」
現状維持ということで点検は終わった。所要時間5分。最高気温40℃という記録的な暑さのなか行く必要があったのだろうか。まあよい。せっかく化粧して外に出てきて勿体なかったのでそのままカルディに行って台湾啤酒を買って飲んだ。おいしかった。
■8月11日(金)
父の実家へ墓参りに行った。コロナ禍以来4年ぶりに会った従姉妹は現在三重県で働いているという。伊勢志摩や伊勢神宮を想像していたら「伊賀です」というので非常に気持ちが高揚した。伊賀越えか!「伊賀は便利なところで、大阪も、京都も、愛知も近いんですよ」なるほど京都帰りの家康が無理にでも押し通った場所である。従姉妹は学生の頃から乗馬を嗜んでいる。今は馬には乗っていないようだが、畑を借りて休みの日は野菜づくりに精を出しているというので立派な伊賀者であると感心した。
帰りに台湾咖啡店「台湾甜商店」で台湾まぜそばと「芋圆(yùyuán)」を食べ、お土産に台湾カステラ、古早味蛋糕を買って帰った。「芋圆」はお芋で作ったお団子に蜜がかかったデザートである。お団子はつるりもちもちとしてたいそう美味だった。九份の名物だそうなので、次回台湾に行った際には現地で味わってみたい。
■8月12日(土)
昼間は家で掃除などして過ごした。東京ではコミックマーケットが開催されており、テレビのニュースでも取り上げられていた。海外からの参加者が日本のマンガ文化に触れて感銘を受けているさまを好意的に報道していた。なにせ私が中学生の頃はオタク=社会の異端者、犯罪予備軍のような言われ方をしていたので隔世の感がある。
夕食時にBSテレ東をつけたら「男はつらいよ 寅次郎と殿様」という映画を放送していた。「殿様」と呼ばれる御仁が愛媛から東京にやってきてひと騒動、というコメディである。「殿様」の名字が「藤堂」というのできっと藤堂高虎にちなんでいるのだろう。会話の中で「ダイシュウ」という地名が何度か出てきたので気になり、調べてみたら「大州城」という藤堂高虎が建てたお城が出てきた。カッコいい。縁あれば拝んでみたいお城リスト入りである。
映画の中で「殿様は東京にいらっしゃったことがあるんですか?」「若い頃何度か」「まあ、参勤交代で?」という会話が無性に面白くて心に残った。古い映画といえど昭和52年作なので、いくらなんでも参勤交代制度などない。こういう会話を面白がるために勉強は必要なのだなと思った。
■8月13日(日)
東京に住む弟一家がやって来た。昨年はコロナ禍で来れなかったこともあり、待望の孫(3歳)の訪問でじじばばはメロメロである。
まごパワー/打首獄門同好会
私はネットフリックスで「關於我和鬼變成家人的那件事(guān yū wǒ hé guǐ biàn chéng jiā rén de nà jiàn shì )」という映画を見た。邦題は「僕と幽霊が家族になった件」だ。ラノベみたいな邦題だが、原題が「僕と幽霊が家族になったことについて」なのでそのままだった。台湾でもライトノベルのようなタイトルが流行っているのだろうか。
「僕と幽霊が家族になった件」は、同性愛者を嫌悪し、同じ職場で働く女性を「お飾り」と呼ぶいけすかない警察官・呉明翰(wú míng hàn、ウー・ミーハン )が、捜査中に偶然拾った赤い封筒がきっかけで、交通事故で死んだゲイの青年・毛邦羽(máo bāng yǔ 、マオ・バンユー)と「冥婚」することになる、というコメディ映画である。
「冥婚」とは台湾に伝わる風習で、死者の魂を慰めることを目的として生者と死者、もしくは死者と死者が結婚するという。台湾では同性婚が認められているので、冥婚する生者と死者がともに男性であってもなんらおかしいことはない…と、新しい価値観を持つマオの祖母や親戚たちはマオ・バンユーの冥婚相手となったウー・ミーハンに喝采を送る。パワフルな女性たちの勢いの強さは憧れの域である。
マオ・バンユーはひき逃げによって命を落とした。犯人はまだ捕まっていない。ウー・ミーハンは麻薬の密売組織を追っている。マオ・バンユーのひき逃げ事件と、ミーハンが追っていた事件が絡み合いながら話が進んでいく。
ミーハンとマオの掛け合いに笑い、ど派手なアクションにはらはらし、マオが飼っている犬・小毛( xiǎo máo、シャオマオ)の可愛らしさに悶えた。シャオマオ、お腹がピンク色なんだもの。朋友が飼っている犬氏(かわいい)を思い出した。なによりウー・ミーハンとマオ・バンユーがお互いを家族として認めあってゆく過程が非常に丁寧で美しかった。→以下ネタバレが過ぎるのでフォントの色を反転する。美しいゆえに別れが切なくて寂しい。たのむマオマオ、ミーハンとシャオマオが待つ現世に帰ってきてくれ。いや帰ってくるでしょ?あなたたちはこれで終わりではないはずだ。私はエンドロールの終わった画面をしばし眺めた。ネトフリはエンドロールが流れ出すと同時に「次のおすすめまであと○秒」などと容赦ない案内を出すでない。わしは余韻に浸っていたいんじゃ。
ミーハンを演じた許光漢氏と、マオを演じた林柏宏氏がインスタグラムをやっていると知り私はさっそくフォローした。本物のキラキラを見た。無印良品を愛するマオが、インスタではLOEWEを着こなしDIORの香水を手に流し目線を送っている。許光漢氏は歌手でもあるためApple Musicでお歌を聞いた。映画の役柄とは全くイメージの違う優しい歌声にうっとりした。なんて多才なのだろう。
そして林柏宏氏の「ほろよいみぞれマンゴーサワー」のCM動画が実にかわいすぎるので困った。キャッチコピーの「在一起、再一起(いっしょに、またいっしょに)」がミーハンへのメッセージにしか見えない。日本では発売しないんですかね。日本のお茶の間にも林柏宏氏のちょっとおぼつかない感じの「ほろよい」という声を聞かせてほしい。私はもれなく心臓発作を起こすと思われる。ハァ無理。最高。
■8月14日(月)
宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」を観に行った。
静かに、美しく、虚実ないまぜになった映像を観ながら、私はユーリ・ノルシュテインの映像のようだと思った。ノルシュテイン作品には「アオサギとツル」というのがあった。ただしノルシュテイン作品のアオサギはアオサギだ。何を言っているのかわからない。
難解なヨーロッパ映画を観たような気持ちで私は映画館をあとにした。
忘れちゃいかんと映画館を出た直後につけたメモがコレだ。
■8月15日(火)
以前から職場の人に「インド映画なら『マッキー』と『きっと、うまくいく』を見ると吉」と勧められていたのだった。まずは「マッキー」から見た。
「マッキー」は非常に身勝手な理由で理不尽に殺された青年がハエに生まれ変わり、復讐を果たすというアクション映画である。小さなハエが復讐相手の車をひっくり返し、事業を大失敗させ、屋敷を吹き飛ばし、これでもかとド派手に復讐を果たす様には粉砕玉砕大喝采。冒頭では(えー、まじでハエじゃん)と不安になったのに、後半になるとハエがかわいくて仕方がない。インド映画なのでハエも踊りをきめて見せる。CG技術が超絶技巧だ。CGのハエと共演した役者さんも卓越した演技力だ。
最後にダンッ!とラージャマウリ監督印が押された瞬間、この上なく気持ちが沸き上がった。ラージャマウリ監督は天才だ。たいへん痛快な作品だった。
またキーラヴァーニ先生の劇伴音楽もたいへんキレがよく、何かサブスクで聞けないだろうかと検索したところ槇原敬之氏の曲名が多数引っかかったのだった。そっちのマッキーも好きだが今日は探していなかった。すまぬマッキー。
■8月16日(水)
弟一家が帰っていった。じじばばはすっかりまごロスである。
私は中国語講座に出かけた。中国語を学習し始めて1年ほどになるが、あまりできている気がしない。
講座の帰りにエバー航空から英語でメールが届いた。11月に予定している台湾旅行だが、予約していた小松発台北行きの飛行機の出発時間が変更になったようだ。アプリ画面が思うように進まないので翌日エバー航空に問い合わせることにした。
■8月17日(木)
エバー航空から届いたメッセージを読むと、11月からの小松⇔台北便の発着スケジュールが大幅に変更となり、小松を19時30分に出発予定だった便が11時45分発に、台北を14時45分に出発予定だった便が06時35分発となったのだった。変更が2〜3時間程度なら許容範囲内だが、8時間も繰り上がると旅行予定を根本から考え直す必要がでてきた。台北に到着する時間が14時35分になるので前日宿泊する必要はなくなった。が、帰りの便が朝6時35分だと、3日目は観光どころか深夜にホテルを出なければいけなくなる。
行きの飛行機と、帰りの飛行機を1日ずつずらすこととし、エバー航空に問い合わせた。振替が可能であれば手続きするが、可能かどうかは本日中に連絡いたします、との返答だった。振替ができなかったら出発する空港を変更するか、旅行自体をキャンセルするか。まいったなあ。
…
2009年のインド映画「きっと、うまくいく」を観た。
インドの超難関工科大学で学んだ、ランチョー・ファルハーン・ラージューの3人。卒業してから10年後に再会したファルハーンとラージュー(と、同窓生1名)は、卒業式の後忽然と姿を消したランチョーを探すため、3人で過ごした学生時代を回想しながら旅に出る。原題は「3 Idiots」。ミステリー要素も含んだコメディ映画である。
このランチョーという男がものすごい天才で、まず常に「学びたい」という意欲があり、教わることを吸収し、理解し、教科書丸覚えではなく、自分の言葉で説明ができる。理にかなわないことはNOと言い、そのために教授を怒らせても意に介さない。成績はつねに首席だが、本人は順位に興味がない。あくまで工学を学ぶことが目的であり、成績はその通過点にすぎない。そして非常に仲間を思いやる、パーフェクトにいいヤツなのだった。
そんな彼でもアクシデントに巻き込まれることはある。非常事態に陥ったらどうするか。ランチョーは言うのだ。
「困難が発生したときにはこう唱えるんだ。胸に手を置いて『うまーく いーく(Aal Izz Well、アールイズウェル)』」。ちなみに綴りは「All is well」が正しいのだが、方言の発音にアルファベットを当てはめているそうだ。
この大学は「大学で良い成績をおさめて良い企業に就職する」というプレッシャーがすさまじく、周囲の過度な期待に圧し潰されて自ら命を断つ者もいる。若者たちは様々な事件に翻弄されるが、彼らの機転と努力と偶然によって事態は好転し、見事な結末を迎える。
人生に希望の持てる良い作品だった。生きるって素晴らしい。2時間51分の長編で、アマプラではレンタル料金が440円かかったが、この作品はこれからも記憶に残り続ける名作だと思った。
…
夕方エバー航空から電話があった。飛行機の振替手続きが完了したとのこと。追加料金もかからなかった。朋友と集合する前の日に宿泊する予定だったホテルにも連絡を入れて、朋友と解散した後に宿泊するよう変更できた。こちらも追加料金なし。はたして一人で台北から小松空港に帰れるだろうか。きっとうまくいく。アール・イズ・ウェルの精神である。


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